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Kendrick Lamarはなぜグラミーを制し、スーパーボウルを制したのか——2025年、ヒップホップの頂点に立った男の軌跡

NARI

2026.04.30 Update

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この記事でわかること

  • 01.2025年グラミー5部門制覇、スーパーボウルハーフタイムショー——Kendrick Lamarが歴史を塗り替えた1年
  • 02.Drake diss「Not Like Us」がなぜ単なるビーフ曲を超えた文化的アンセムになったのか
  • 03.ヒップホップの頂点に立ったKendrickの言葉「ラップミュージックほど力強いものはない」の意味

2025年2月2日。第67回グラミー賞の授賞式。

Kendrick Lamarが「Not Like Us」でRecord of the Year(最優秀レコード賞)を受賞した瞬間、プレゼンターのDiana Rossからトロフィーを受け取りながら、Kendrickは”starstruck”(茫然自失)という言葉を使った。
スピーチでは西海岸ラップのパイオニアたちへのリスペクトを述べ、こう続けた。

「ラップミュージックほど力強いものはない。俺たちはカルチャーそのものだ。ここに永遠に存在し続ける」

その夜、Kendrickは5つのグラミーを持って帰った。
Best Rap Performance、Best Rap Song、Best Music Video、Song of the Year、そしてRecord of the Year。
すべて「Not Like Us」一曲で。

さらに8日後、スーパーボウルLIXのハーフタイムショーのステージに立ち、6万人以上の観衆と全米中継のカメラの前で同曲を披露した。

一曲の「ディス曲」が、これほどの高みに到達した例はヒップホップ史上なかった。
なぜKendrick Lamarはここまでになったのか。

「Not Like Us」が生まれるまで——2024年春のビーフ

2024年春、ヒップホップ史に残るビーフが勃発した。
Kendrick LamarとDrakeによる、ディストラック合戦だ。

きっかけはMetro Boomin&Future のアルバムへのKendrickの客演で、Drakeを暗に批判するラインが含まれていたことに遡る。
そこからDrakeが反撃し、Kendrickが応じ、一週間で複数のディストラックが双方から投下されるという前代未聞の展開になった。

Kendrickは「euphoria」「6:16 in LA」「Meet the Grahams」を矢継ぎ早にリリース。
そして2024年5月、「Not Like Us」が公開された。

Mustardが30分で作ったというウエストコーストのビートの上で、Kendrickは「OVH O」(Drakeが所属するOVO Soundを指す)と繰り返しながら、Drakeを「カルチャーハゲタカ」と断罪した。
ビルボードHot 100で1位を獲得し、Hot Rap Songs では20週間1位を記録。Spotifyで10億回再生を突破した。

ビーフの勝者は明確だった。

ディス曲がアンセムになった理由

「Not Like Us」が単なるビーフ曲を超えた理由は何か。

第一に、音楽として純粋に優れていた
Mustardのビートはウエストコーストへのオマージュであり、フックは耳から離れない。
ディス曲でありながら、ヒップホップの喜びと疾走感がそのまま詰まっている。

第二に、「カルチャー」への訴求があった
「Not Like Us」はDrakeへの攻撃である以上に、ヒップホップのオーセンティシティ(本物らしさ)への讃歌だ。「カルチャーに属さない者」への告発は、ヒップホップリスナーの感情と直結した。
Juneteenth(6月19日)のサプライズコンサートで同曲を5回演奏し、観客全員が一言一句歌い続けた光景がその証拠だ。

第三に、Kendrick自身の文脈が後押しした
2018年にラッパーとして初めてピューリッツァー賞を受賞した男が、Comtonへのリスペクトを込めたMVを作り、グラミーの壇上で西海岸ラップのパイオニアたちに捧げるスピーチをした。
「Not Like Us」は単曲ではなく、Kendrickというアーティストのキャリア全体と結びついていた。

グラミー授賞式——「starstruck」と言った男

2025年のグラミー授賞式で最も印象的だったのは、Kendrick自身の反応だった。

Song of the YearでDiana Rossからトロフィーを受け取る際、Lamarは「starstruck」だったと語った。
世界中が「Kendrick最強」と言っている夜に、本人が「Diana Rossを前にして圧倒された」と言う。
そのギャップが、Kendrickというアーティストの人間的な深さを示している。

この夜の5部門制覇で、Kendrickの通算グラミー獲得数は22に達した。

グラミー会場では「Not Like Us」が流れた瞬間、スター揃いの観客が一斉に口ずさんだ。
Taylor SwiftもBeyoncéも、みんな一緒になってフックを歌っていた。
その光景が、この曲の「文化への浸透度」を如実に示していた。

スーパーボウルハーフタイムショー——伝説の16分間

グラミーから8日後の2025年2月10日。
スーパーボウルLIXのハーフタイムショー。

Kendrickは「Squabble Up」「Humble」「DNA」「Euphoria」「Man at the Garden」「Peekaboo」を立て続けに披露した後、「Not Like Us」を演奏する前にこう語った。
「彼らが一番聴きたい曲があるのはわかってる。
でも訴訟があるから気にしてるみたいだ」——とDrakeの訴訟を茶化しながら、いったんじらすような演出をした。

その後SZAを呼び込んで「Luther」と「All the Stars」を披露。
そしてついに「Not Like Us」が始まった瞬間、スタジアムが爆発した。

Kendrickは曲の中でDrakeを名指ししたまま歌い、「pedophiles」という問題のある一行のみ省略して、スタジアム全体に合唱させた。
テニス界の女王Serena Williamsも観客席で踊る様子がカメラに捉えられた。

この16分間のパフォーマンスの後、KendrickはBillboard 200で同じ週にトップ10に3枚のアルバムを送り込むという、ヒップホップアーティスト史上初の快挙を達成した。

2026年——まだ終わっていない

2025年の快進撃を経て、Kendrickは2026年のグラミーでも引き続き存在感を示している。

第68回グラミー賞(2026年2月1日開催)では、Kendrick LamarとSZAが「luther」でRecord of the Yearを受賞。
Kendrickは史上最多グラミー獲得ラッパーの称号を手にした。
また同授賞式でKendrickはLuther Vandrossへのトリビュートと、ヒップホップコミュニティへの感謝を述べた。

連続するグラミー制覇、スーパーボウルでの歴史的パフォーマンス、そして2026年グラミーでの「luther」受賞——Kendrickの2025〜26年は、キャリアの絶頂と言っていい。

「Not Like Us」が残したもの

ディス曲は普通、時間とともに消えていく。
ビーフが終われば文脈が失われて、ただの「過去の出来事」になる。

「Not Like Us」は違った。
グラミーのRecord of the Yearを獲り、スーパーボウルのステージで6万人が合唱し、ヒップホップのオーセンティシティを巡る問いを文化全体に投げかけた。
Drakeへの個人攻撃として始まり、ウエストコーストへのオマージュとなり、ヒップホップそのものの宣言になった。

Kendrickがグラミーの壇上で言った言葉を、もう一度引用する。

「ラップミュージックほど力強いものはない。俺たちはカルチャーそのものだ」

その言葉の重さは、2025年の出来事全体が証明した。

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