PENDULUMが再び動き出す──ドラムンベースという音楽の「爆発」を知っているか
この記事でわかること
- 01.サマソニ2026に復活出演するPENDULUMを入口に、ドラムンベースという音楽ジャンルの本質に迫る。
- 02.90年代UKから生まれたドラムンベースの歴史と、PENDULUMがなぜ「異端」だったのかを解説する。
- 03.フェスで体感する前に知っておきたい、必聴5曲・3アルバムを厳選紹介。
「ドラムンベースって何?」
そう聞かれたとき、私はいつも同じ答えを返す。「音楽がいちばん速く、いちばん重くなった瞬間のことだ」と。
2026年8月、サマーソニックのステージにPENDULUMが帰ってくる。
活動停止から数年。完全体での復活は、単なるバンドの再結成ではない。
ドラムンベースという音楽が、再びメインステージの中心に立つ瞬間だ。
Electronic担当ライターとして、この機会にドラムンベースという音楽のすべてを伝えたいと思う。
PENDULUMを「名前は知っているけど詳しくない」という人も、「Electronicはよくわからない」という人も、この記事を読んでからステージに立ってほしい。
体感が、まるで変わる。

ドラムンベースとは何か──170BPMの物理
まず基本から押さえよう。
ドラムンベース(Drum and Bass、略称D&B)は、1990年代初頭にイギリスで生まれた電子音楽のジャンルだ。
その最大の特徴は「速さ」と「重さ」の共存にある。
テンポは通常160〜180BPM。
一般的なポップスが120BPM前後であることを考えると、その速さがわかるだろう。
しかしただ速いだけではない。
そこに「ベースライン」と呼ばれる極めて重低音の音が叩きつけられる。
高速のドラムと深く沈み込むベース──この二つの要素が、聴く者の身体を直接揺さぶる。
ジャングル、ガラージ、テクノ、ヒップホップのサンプリング文化が混ざり合い、ロンドンのアンダーグラウンドクラブシーンから生まれたドラムンベースは、1990年代後半には世界中のクラブで鳴り響くようになった。
| ジャンル | 平均BPM | 生まれた場所 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ポップス | 100〜130 | – | メロディ重視 |
| ハウス | 120〜130 | シカゴ | 四つ打ち、反復 |
| テクノ | 130〜150 | デトロイト | 機械的、ミニマル |
| ドラムンベース | 160〜180 | ロンドン | 高速ドラム+重低音ベース |
| ダブステップ | 138〜142 | ロンドン | 半速感、ウォブルベース |
PENDULUMが「異端」だった理由
2002年にオーストラリア・パースで結成されたPENDULUMは、ドラムンベースのシーンに登場した瞬間から「異端」だった。
当時のドラムンベースはクラブミュージックとして完全にアンダーグラウンドな存在だった。
ギターがある音楽ではなく、バンドが演奏する音楽でもなく、DJがターンテーブルで回すものだった。
ところがPENDULUMは、ドラムンベースのビートとベースラインの上に、ロック的なギターリフとメロディを乗せた。
「ロックとドラムンベースの融合」──それは既存のどちらのシーンからも「異物」として見られるリスクがあった。
しかし結果は逆だった。2005年のデビューアルバム『Hold Your Colour』は、ドラムンベースを「フェスで鳴らせる音楽」に変えた最初の作品として音楽史に刻まれている。
PENDULUMの軌跡──3枚のアルバムで読む進化
『Hold Your Colour』(2005)──衝撃のデビュー
ドラムンベースとロックの融合を初めて本格的に打ち出した作品。”Slam”、”Blood Sugar”など、クラブでもライブハウスでも機能する楽曲が並ぶ。今聴いても古びない強度がある。
『In Silico』(2008)──ロック色を強めた転換点
よりポップ・ロック寄りにシフトし、ドラムンベースを知らなかった層にも届いた作品。”Propane Nightmares”は彼らの代名詞的楽曲として今も世界中でプレイされている。
『Immersion』(2010)──到達点にして区切り
バンドとしての集大成。”Watercolour”、”The Island”など、フェスのメインステージを見据えた壮大なスケールの楽曲が揃う。この作品を最後に活動は長期休止へ。だからこそ2026年の復活は特別な意味を持つ。
ドラムンベースの系譜──PENDULUMの前後を知る
PENDULUMをより深く楽しむために、ドラムンベースのシーン全体を少し俯瞰してみよう。
Goldie──1995年の『Timeless』はドラムンベースをアート音楽として確立させた金字塔。
クラブミュージックがアルバムという形式で語られた最初期の作品のひとつだ。
The Prodigy──厳密にはドラムンベースではなくビッグビートだが、PENDULUMの「ロックとElectronicの融合」という方向性に最も近い先達。
“Firestarter”が生まれた1996年から、その路線は始まっていた。
Chase & Status──2000年代後半以降のドラムンベースをメインストリームに引き上げたUKデュオ。
ヒップホップやソウルとの融合で、ジャンルの間口をさらに広げた。
Noisia──オランダ出身のトリオで、よりダーク&テクニカルな方向性。
ドラムンベースの「深淵」を知りたい人への入口。
サマソニ2026で体感する前に聴いておきたい5曲
PENDULUMのライブに向けて、予習しておくべき5曲を厳選した。
1. “The Island Pt. I (Dawn)”──最もフェス映えする一曲。イントロの静けさから爆発するドロップの落差が圧倒的。
2. “Watercolour”──叙情的なメロディとドラムンベースの融合。入門者にも最もとっつきやすい一曲。
3. “Slam”──デビュー作収録。ドラムンベースの「速さと重さ」を最も純粋に体感できるトラック。
4. “Propane Nightmares”──ロック的なリフとドラムンベースが最も高い次元で融合した代表曲。
5. “Witchcraft”──ダークな世界観とキャッチーなメロディの共存。ライブでの盛り上がりは保証付き。
フェスで体感する「ドラムンベース」という物理現象
最後に、これだけは伝えておきたい。
ドラムンベースは、音源で聴くのと、大音量のスピーカーの前で体感するのとでは、まったく別の音楽だ。170BPMのドラムが空気を震わせ、ベースが胸の奥に響くとき、それはもう「聴く」ではなく「浴びる」という体験になる。
PENDULUMのライブはその極致だ。バンドとしての生演奏と、クラブミュージックとしての音響設計が融合した瞬間、会場全体が一つの生き物のように動く。
サマソニ2026、8月16日(東京)・8月14日(大阪)。
PENDULUMのステージに、ぜひ立ち会ってほしい。