【メタル入門】 うるさいだけじゃない、ヘヴィネスの向こう側へ
この記事でわかること
- 01.「うるさくて怖い」は誤解。メタルは実は最も技術的で多様な音楽ジャンル
- 02.Black SabbathからBAND-MAIDまで、入門に最適な5枚を厳選
- 03.サブジャンルの迷宮に入る前に、まず「これ」を聴いてほしい
私がメタルを最初に聴いたとき、正直怖かった。
ギターの歪み、ドラムの爆音、叫ぶような(あるいは本当に叫んでいる)ボーカル。
「これって音楽なの?」って思った。
日英ハーフとして育った私は、どちらの国の音楽文化にも触れてきたけど、メタルだけはずっと「自分には関係ない世界」だと思ってた。
でも一度ちゃんと聴いたら、完全にやられた。
メタルは「うるさい音楽」じゃない。
クラシック音楽に匹敵するくらい複雑な構成を持ち、演奏技術は他のどのジャンルよりも要求が高く、サブジャンルの多様さはジャズにも負けない。
知れば知るほど深くて、一度沼にはまったら抜け出せない。
今回はメタル初心者が最初に聴くべき5枚を選んだ。
「ヘヴィな音楽なんて自分には無理」と思っている人こそ、読んでほしい。
そもそもメタルって何?
ヘヴィメタルは1960年代後半〜70年代初頭のイギリスで生まれた。
歪んだギター、重低音のベース、激しいドラム——これが基本の三要素。
Led ZeppelinやDeep Purpleがその先駆けで、Black Sabbathが「メタル」という音楽の型を作ったとされている。
そこから50年以上かけて枝分かれした結果、今やメタルのサブジャンルは数十種類に及ぶ。
スラッシュ、デス、ブラック、パワー、プログレッシブ、メロディック・デス、ポスト……。
初心者がこのリストを見たら確実に逃げ出す。
だから今回は「サブジャンルの分類」は一旦全部忘れてもらって、純粋に「これが気持ちいい」と感じられる入口を5枚で示す。
1. Black Sabbath『Paranoid』(1970)——すべてはここから
メタルの歴史を語る上で外せない一枚。
バーミンガム出身の4人組が作り上げた、暗くヘヴィなサウンドは当時の誰も聴いたことのない音だった。
タイトル曲「Paranoid」はたった2分44秒のシンプルな曲だが、そのリフは50年以上経った今も色褪せない。
「Iron Man」のイントロは、メタルを知らない人でも聴いたことがあるはず。
映画やCMで何度も使われてきた、メタル史上最も有名なリフのひとつだ。
「古い音楽は退屈」と思う人にこそ聴いてほしい。
1970年録音とは思えないエネルギーがある。
まず「War Pigs」の8分間を聴き切ってみて。その重さと迫力に、きっと驚くはずだ。
2. Metallica『Master of Puppets』(1986)——テクニカルな暴力
スラッシュメタルの最高傑作にして、メタル史上最重要アルバムのひとつ。
ドラムのLars Ulrich、ギターのJames HetfieldとKirk Hammett、ベースのCliff Burton——4人の演奏技術の高さは、メタルという音楽が「うるさいだけ」ではないことを証明している。
タイトル曲「Master of Puppets」は8分以上の大曲で、静と動の落差が激しい。
ヘヴィなパートとメロディアスなパートが交互に現れ、最初から最後まで飽きさせない構成は、ほとんど交響曲に近い。
Netflixの『ストレンジャー・シングス』シーズン4でこの曲が使われてから、若い世代にも一気に広まった。あのシーンを見た人は、ぜひアルバム全体を通して聴いてみてほしい。
3. Nightwish『Once』(2004)——美しさとヘヴィネスの共存
「メタルって男性的な音楽でしょ」という偏見を一曲で吹き飛ばしてくれるのが、フィンランドのシンフォニックメタルバンドNightwishだ。
オーケストラとメタルを融合させた「シンフォニックメタル」というジャンルの代表格で、ボーカルのTarja Turunenのオペラ的な歌唱と、ギターの激しいリフが同居する。
「うるさくて怖い」とは対極の、壮大で映画的なサウンドだ。
アルバム『Once』の1曲目「Dark Chest of Wonders」を聴けば、メタルのイメージが変わるはず。
Evanescence好きの人には特に刺さると思う。
「音の壁」に圧倒される体験がしたいなら、ヘッドホンでフルボリュームで聴いてほしい。
4. BAND-MAID『Unseen World』(2021)——日本発、世界が認めたガールズメタル
日本のバンドも紹介しないわけにはいかない。
BAND-MAIDは「メイド服を着た5人組ガールズバンド」という外見のインパクトに隠れがちだが、その演奏技術と楽曲クオリティは世界レベルだ。
ギタリストのKANAMIのプレイは海外のギタリストからも高く評価されており、Billboard誌やRolling Stone誌でも取り上げられている。
2024年にはアニメ『ロックは淑女の嗜みでして』のオープニングを担当し、さらに認知度が上がった。
『Unseen World』はBAND-MAIDの代表作。
「Unleash!!!!!」「Domination」あたりから入ると、彼女たちの魅力がわかりやすい。
J-ROCKからメタルへの橋渡しとして最適な一枚だ。
5. 花冷え。『ぶっちぎり東京』(2024)——新世代日本メタルの衝撃
2024年に突然現れて、日本のメタルシーンをぶっ飛ばしたバンドが花冷え。(Hanabie.)だ。
ポップなメロディとブルータルなデスコアを行き来するスタイルは「kawaii metal」の文脈で語られることもあるが、演奏の本気度はどこにも引けを取らない。
ボーカルのMamikoが可愛らしいクリーンボーカルとグロウル(低音の叫び声)を自在に使い分ける様子は、初見では衝撃を受けること間違いなし。
「ぶっちぎり東京」はそのタイトル通りの突進力。
4分間があっという間に終わる。
BABYMETALで「かわいいメタル」の存在は知っていたという人にも、花冷え。の攻撃性はまた別の驚きを与えてくれる。
メタルのどこから入るかは「気分」でいい
5枚を並べてみると、かなりバラバラに見えるかもしれない。
Black Sabbathの70年代ブルーズ感と、花冷え。の2020年代デスコアは、同じ「メタル」という言葉でくくるのが不思議なくらい違う音だ。
でもそれがメタルの面白さだと思う。
「ヘヴィ」という一点だけを軸に、50年以上かけて無数の方向に進化してきた音楽。
ポップスよりも振れ幅が大きく、出会い方によって全然違うジャンルに見える。
「これなら聴けそう」と思った一枚から入ればいい。
Nightwishから入ってもいいし、花冷え。から入ってもいい。メタルに「正しい入口」はない。
怖がらなくていい。私もそこから始まったんだから。