音楽から映画に出会う–サントラが最高だった映画10本
この記事でわかること
- 01.映画より先にサントラを聴いて、映画に出会ったことはあるか
- 02.ロック・インディー・エレクトロニック——音楽が主役の映画10本を紹介
- 03.「この曲、どの映画の曲だっけ?」から始まる、新しい映画との出会い方
映画との出会い方は、映画館だけとは限らない。
ラジオから流れてきた曲に耳を奪われて「これはどの映画の曲だ?」と調べたら、観たことのない映画に辿り着いた——そういう体験をしたことがある人は多いはずだ。
音楽を入口にして映画に出会う。
その逆経路は、時に映画館から入るよりも強烈な印象を残す。
私はUKロックが好きで、Oasisを聴いてブリットポップの時代に入り込んだ口だが、その延長線上にある映画——マンチェスターやロンドンのシーンを背景にした映画——に出会ったのは、音楽が先だった。
音楽が「扉」になって映画の世界が開いた。
今回は「サントラが最高で、その映画も最高だった」10本を紹介する。
映画から音楽に入ってもいいし、音楽から映画に入ってもいい。
どちらでも構わない。重要なのは、その出会いが生まれることだ。
1. 『Almost Famous(あの頃ペニー・レインと)』(2000)——ロックジャーナリズムの黄金時代
キャメロン・クロウ監督が自身の10代のロックジャーナリスト体験を基に書いた半自伝的作品。
15歳の少年がローリング・ストーン誌のライターとしてロックバンドのツアーに同行する物語だ。
サントラにはSimon & Garfunkel、The Beach Boys、Elton John、Led Zeppelinといった70年代ロックの金字塔が並ぶ。
なかでも劇中でバスの中の全員が「Tiny Dancer」を合唱するシーンは、映画史に残る名場面だ。
音楽と旅と青春が交差する、この映画はロックを愛する人間なら必ず刺さる。
まず聴く1曲:Elton John「Tiny Dancer」
2. 『Trainspotting(トレインスポッティング)』(1996)——UKレイブカルチャーの爆発
ダニー・ボイル監督によるエディンバラのヘロイン中毒者たちを描いた衝撃作。
映画の内容はハードだが、サントラの選曲は当時のUKシーンの最前線を完璧に捉えている。
Iggy Popの「Lust for Life」でオープニングから疾走し、Underworld「Born Slippy .NUXX」が映画を締めくくる。
Pulp、Elastica、New Order、Leftfieldと、ブリットポップとレイブカルチャーが交差する1990年代UKの空気がそのままサントラになっている。
このサントラを聴いてUKインディーに入った人は世界中に何万人もいるはずだ。
まず聴く1曲:Underworld「Born Slippy .NUXX」
3. 『Drive(ドライヴ)』(2011)——シンセウェイヴの夜
ニコラス・ウィンディング・レフン監督、ライアン・ゴズリング主演。
ロサンゼルスを舞台にした暴力とロマンスの映画だが、サントラがシネマとして完璧だ。
Kavinsky「Nightcall」、College「A Real Hero」、Chromatics「Tick of the Clock」——80年代シンセポップへの愛を現代のプロダクションで再解釈した楽曲群は、「シンセウェイヴ」というジャンルの一般認知を大きく押し上げた。
映画を観ずにサントラだけ聴いても成立する音楽的完成度で、エレクトロニックミュージックへの入口としても機能する一枚だ。
まず聴く1曲:Kavinsky「Nightcall」
4. 『Guardians of the Galaxy(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)』(2014)——70年代ポップの逆輸入
マーベル映画の中で音楽が最も重要な役割を果たす一作。
主人公が宇宙に持ち込んだウォークマンに入った「Awesome Mix Vol.1」——Jackson 5、David Bowie、Marvin Gaye、10ccが収録された70〜80年代のポップ混成カセットテープが物語の中心に置かれている。
この映画をきっかけに「Come and Get Your Love」や「Hooked on a Feeling」を聴いた若い世代は無数にいる。
70年代のポップミュージックが2014年のマーベル映画を通じて世界中の若者に届いた——これは音楽史における「逆輸入」の奇跡だ。
まず聴く1曲:Redbone「Come and Get Your Love」
5. 『High Fidelity(ハイ・フィデリティ)』(2000)——レコード好きの聖典
ニック・ホーンビィの原作小説を映画化。
シカゴのレコード店主が元カノのことを回想しながら自分の人生を棚卸しする話だが、これは「音楽好きのための映画」として屈指の作品だ。
主人公は何かにつけて「Top 5」リストを作り、音楽で記憶を整理する——その感覚は音楽好きなら誰もが共感できる。
サントラにはStevie Wonder、The Velvet Underground、Bob Dylan、The Kinks、Marvin Gayeが並ぶ。
「好きな音楽について誰かと延々話したい」という衝動を音楽好きに与える映画として、右に出るものはない。
まず聴く1曲:The Kinks「Little Bit Of Emotion」
6. 『Submarine』(2010)——アークティック・モンキーズのフロントマンが作った青春映画のサントラ
リチャード・アヨアド監督によるウェールズを舞台にした青春映画。
サントラをArctic MonkeysのボーカルAlex Turnerが手がけたことで、インディーロックファンの間では聖典的な扱いを受けている。
アコースティックギターを中心とした繊細なインストゥルメンタルと、Alexの語りかけるような歌声——Arctic Monkeysの暴力性を完全に消し去った別人のような音楽だが、それがこの映画の思春期の空気感と完璧に一致している。
この映画を通じてAlex Turnerの音楽的幅広さを知った人は多い。
まず聴く1曲:Alex Turner「Hiding Tonight」
7. 『8 Mile』(2002)——デトロイトとEminemの自伝
Eminemが自身をモデルにした半自伝的映画。
デトロイトのラップシーンで成り上がろうとする若者の話だが、音楽ドキュメンタリーとしての側面も強い。
主題歌「Lose Yourself」はアカデミー賞オリジナル歌曲賞を受賞した。
それ以上に重要なのは、映画全体を通じてデトロイトという街とヒップホップの歴史が丁寧に描かれている点だ。
ヒップホップの「ビーフ」や「フリースタイルバトル」という文化を映画として理解するなら、まずこれを観ることをすすめる。
まず聴く1曲:Eminem「Lose Yourself」
8. 『Lost in Translation(ロスト・イン・トランスレーション)』(2003)——東京の夜とシューゲイザー
ソフィア・コッポラ監督。
東京のホテルで孤独に過ごす中年男性と若い女性の交流を描いた静かな映画。
サントラにはMy Bloody Valentine、Jesus and Mary Chain、Air、Squarepusherと、シューゲイザーとフレンチエレクトロが並ぶ。
この映画をきっかけにMy Bloody Valentineに入った人を何人も知っている。
「東京の夜景とシューゲイザー」という組み合わせは、映画以外では誰も思いつかなかったが、完璧に正解だった。
まず聴く1曲:My Bloody Valentine「Sometimes」
9. 『Sing Street』(2016)——80年代ダブリンとニュー・ウェイヴ
ジョン・カーニー監督。
1985年のダブリンを舞台に、学校でいじめられる少年がバンドを結成して女の子に近づこうとする青春映画。
The Cure、Duran Duran、Hall & Oates、The Clashが物語の重要な鍵を握る。
劇中バンドが「あのバンドみたいな音楽をやろう」と試行錯誤しながら自分たちのサウンドを見つけていく過程は、音楽好きなら誰もがグッとくる。
80年代のUKロックへの愛が溢れていて、見終わったらThe Cureのバックカタログを全部聴きたくなる。
まず聴く1曲:The Cure「In Between Days」(劇中でカバーされる)
10. 『Baby Driver』(2017)——プレイリストが映画になった日
エドガー・ライト監督。
耳鳴りを抱えた逃がし屋ドライバーが常に音楽を聴きながら仕事をする、という設定で、映画全体がひとつの巨大なプレイリストとして機能している。
Simon & Garfunkel「Baby Driver」からBeach Boys、Queens of the Stone Age、Barry White、Jon Spencerまで、ジャンルを無視した選曲が画面上のアクションと完全に同期する。
映画の編集と音楽が一体化したという意味で、映画史上最も「音楽と映画が融合した」作品の一つだ。
まず聴く1曲:Simon & Garfunkel「Baby Driver」
音楽と映画は、同じ扉の両側にある
10本を選んでみると、共通点が見えてくる。
どの映画も「音楽が物語を語っている」のではなく、「音楽そのものが物語だ」という作品ばかりだ。
映画監督が選曲に命をかけているとき——それは単なるBGMの選択ではない。
ある曲がある場面に流れることで、言葉でも映像でも伝えられない何かが伝わる。
その瞬間のために映画がある、と言っても過言ではない。
サントラを入口にして映画に入るのもいいし、映画を入口にして音楽に入るのもいい。
どちらでも構わない。重要なのは、その「扉」が開くことだ——それがMUSINAの存在理由と、正確に重なっている。